ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 光を宿さない王女の瞳は、たしかに龍の心をうつしとっていました。
 その孤独の青に、自分の心を重ねていることに、王女は気づきました。
 しかし、龍の心の奥底には、もっともっと深くて濃い絶望が感じられました。

「あなたさまはとても孤独なのですね」
 つぶやくようにささやいた王女の瞳から、ひとつぶの涙がこぼれ落ちました。
 龍のいかりを買うこともいとわずに、王女は龍のために涙をこぼしつづけました。

 ひとつぶひとつぶ涙がこぼれるたびに、龍のこころはふしぎと温かいものを感じるようになりました。
 王女の涙をひとすくいその頬からそっとぬぐうと、龍はその涙をなめました。
 すると今まであじわったことのないような、しあわせな甘い味が龍をつつみました。

「わたくしはあなたさまのおそばに、ずっと、ずっといることをお約束いたします」
 王女はこの孤独でさびしい龍のそばに、ずっといたいと、そう思いました。
「その約束をはたすために、どうかあなたさまのお力で、この国をお救いください」
 そう祈りながら、王女は龍の前にひざまずきました。

 自分の存在が、どうか少しでも龍の支えとなりますように。
 そして、それがこの国の支えとなりますように。

『その願い聞きとどけよう』

 龍はその力で国をおおい、他国の侵攻をしりぞけ、けがや病気で苦しむ人々をいやしていきました。

 戦争を終えた国は、平和な日々が戻ってきました。
 その後、星読みの王女は精霊となり、龍の花嫁として青龍と共に、この国をいつまでも見守り続けました。
 そして、ふたりの約束は、今でもずっと守られ続けているのです。


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