ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 エラに言われて、リーゼロッテはコルセットをつけてみた。背中の紐を締められていき、呼吸が圧迫される。

「もっと締めるのが一般的ですが、お嬢様はコルセットに慣れておられませんので、緩めにしておきます」

 エラはそう言ったが、リーゼロッテにしてみれば、十分苦しい閉め具合だった。しかし、締め終わったコルセットの胸を見て、「まあ」とリーゼロッテは声を上げた。そこにささやかな谷間ができていたからだ。それを見たエラは微笑ましそうに顔を緩めた。

 ふたりでニコニコしながら、三年前にあつらえたドレスに袖を通してみた。エラに背中のボタンを留めてもらいながら、次第にふたりの顔から笑顔が消えていく。

「…………」
「…………」

 ぴったりだった。三年たった今でも、ドレスは今まさにリーゼロッテのためにあつらえられたかの如くぴったりであった。悲しいかな、特に胸まわりが。
 なぜだ。寄せて上げたハズなのに。

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