ふたつ名の令嬢と龍の託宣
◇
ハインリヒ王子は高い壇上の椅子で足を組み、白い手袋をはめた手で頬杖を突きながら、どうしたものかと思案に暮れていた。茶会の主催者が早々に退出するなど、王妃の破天荒ぶりも困ったものである。
それにしても、このような茶会に本当に意味はあるのだろうか。そもそも、わざと冷たく当たって、令嬢たちを遠ざけているのだ。
そうでもしないと、彼女たちの身の安全が保障できない。万が一、飛び出してこられたら、この前のようにきちんと避け切れるだろうか。そう思うと、自然に眉間にしわが寄る。
かつて、思い余った令嬢が突撃してきて、肝を冷やしたことがあった。
その令嬢は自分に抱き着こうとでもしたのか、いきなり茂みの奥から飛びかかってきたのだ。あの時ばかりは、自分の反射神経に感謝した。自分が避けたせいで、その令嬢は思い切り地面にスライディングして、鼻の頭をすりむいてしまっていたが。
女性の一人も受け止められず、男としては非常に申し訳なく思ったので、その令嬢には良縁をみつくろっておいた。令嬢の実家は玉の輿に乗れたと喜んでいたし、年は離れているが、今では仲睦まじく暮らしていると聞く。
ハインリヒは眼前に押し寄せている令嬢たちに、知らずため息をついた。こうして護衛の近衛兵を配しているが、これは王太子であるハインリヒのためではなく、令嬢たちを己から守るために置いているのだ。
こうも多くの令嬢に囲まれていると、常に戦々恐々として、気が休まらない。一目で託宣の相手が判別できるなら話は別だが、どう考えてもこの時間が無駄に思えて仕方がなかった。
「おい、ヴァルト、お前はどうだったんだ?」
ハインリヒ王子は高い壇上の椅子で足を組み、白い手袋をはめた手で頬杖を突きながら、どうしたものかと思案に暮れていた。茶会の主催者が早々に退出するなど、王妃の破天荒ぶりも困ったものである。
それにしても、このような茶会に本当に意味はあるのだろうか。そもそも、わざと冷たく当たって、令嬢たちを遠ざけているのだ。
そうでもしないと、彼女たちの身の安全が保障できない。万が一、飛び出してこられたら、この前のようにきちんと避け切れるだろうか。そう思うと、自然に眉間にしわが寄る。
かつて、思い余った令嬢が突撃してきて、肝を冷やしたことがあった。
その令嬢は自分に抱き着こうとでもしたのか、いきなり茂みの奥から飛びかかってきたのだ。あの時ばかりは、自分の反射神経に感謝した。自分が避けたせいで、その令嬢は思い切り地面にスライディングして、鼻の頭をすりむいてしまっていたが。
女性の一人も受け止められず、男としては非常に申し訳なく思ったので、その令嬢には良縁をみつくろっておいた。令嬢の実家は玉の輿に乗れたと喜んでいたし、年は離れているが、今では仲睦まじく暮らしていると聞く。
ハインリヒは眼前に押し寄せている令嬢たちに、知らずため息をついた。こうして護衛の近衛兵を配しているが、これは王太子であるハインリヒのためではなく、令嬢たちを己から守るために置いているのだ。
こうも多くの令嬢に囲まれていると、常に戦々恐々として、気が休まらない。一目で託宣の相手が判別できるなら話は別だが、どう考えてもこの時間が無駄に思えて仕方がなかった。
「おい、ヴァルト、お前はどうだったんだ?」