ふたつ名の令嬢と龍の託宣
踵を返してハインリヒの後を追おうとしたジークヴァルトを、アンネマリーが追いすがった。
「恐れながら公爵閣下、リーゼロッテはわたくしの大事な従妹にございます。どうかわたくしの同行をお許しください」
一瞬、逡巡したあと、ジークヴァルトは「王子殿下の許可が取れ次第、控えの間に迎えをよこす」と言い残して、今度こそリーゼロッテを連れて行ってしまった。
騒然とした雰囲気で、令嬢たちは控えの間に戻ってきた。思いのほか早く終わったお茶会に、待っていたお付きの侍女たちも慌てた様子で己の主人を迎え入れている。
アンネマリーは、ここにいるはずの人物を探していた。
「アンネマリー様?」
見知った声に振り向くと、そこにはやはりリーゼロッテの侍女であるエラ・エデラーが立っていた。茶色がかった赤毛に鳶色の瞳は昔のままだ。
「エラ、やっぱり同行はあなただったのね。クリスタ叔母さまはいらしてないと聞いたから」
「お久しぶりでございます。国にお戻りになられていたのですね。アンネマリー様、とてもお美しくなられて……」
言いながら、若干目がさまよっているのは、リーゼロッテが見つからない不安からだろう。
「恐れながら公爵閣下、リーゼロッテはわたくしの大事な従妹にございます。どうかわたくしの同行をお許しください」
一瞬、逡巡したあと、ジークヴァルトは「王子殿下の許可が取れ次第、控えの間に迎えをよこす」と言い残して、今度こそリーゼロッテを連れて行ってしまった。
騒然とした雰囲気で、令嬢たちは控えの間に戻ってきた。思いのほか早く終わったお茶会に、待っていたお付きの侍女たちも慌てた様子で己の主人を迎え入れている。
アンネマリーは、ここにいるはずの人物を探していた。
「アンネマリー様?」
見知った声に振り向くと、そこにはやはりリーゼロッテの侍女であるエラ・エデラーが立っていた。茶色がかった赤毛に鳶色の瞳は昔のままだ。
「エラ、やっぱり同行はあなただったのね。クリスタ叔母さまはいらしてないと聞いたから」
「お久しぶりでございます。国にお戻りになられていたのですね。アンネマリー様、とてもお美しくなられて……」
言いながら、若干目がさまよっているのは、リーゼロッテが見つからない不安からだろう。