ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 覆いかぶさるようにリーゼロッテを一人がけのソファに閉じ込めて、ジークヴァルトは背筋が凍りそうな魔王の笑みを、その口元に浮かべた。

「どう、して、そんなこと、に、なったの、だ……?」

 状況が把握できないリーゼロッテは、ジークヴァルトの言葉をそのままオウム返しにした。

「それに、あれはどうした? 身に着けるように言ったはずだ」
「あれ……でございますか……?」
「先日、首飾りを贈っただろう」

 そう言われて、いつか送られてきた、首飾りと耳飾りのことだと思い当たる。

「申し訳ございません……高価なものに、その、とても気後れをしてしまって……」

 理由は違ったが、気後れしたのは確かである。意識がずいぶんとはっきりしてきたリーゼロッテは、今なぜ、こんな状況になっているのか、皆目見当がつかなかった。

(ここはどこなの? どうしてジークヴァルト様が? それにお茶会はどうなったの……?)

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