ふたつ名の令嬢と龍の託宣
先ほどまで、王妃の庭園にいたはずだった。黒いモヤを纏ったジークヴァルトに腕をつかまれたところまでは覚えている。
(この方が、ジークヴァルト様……なのよね。お顔も、ジークフリート様に似ているし……)
記憶の中のジークヴァルトは、まだ子供で、黒いモヤのかかった得体のしれないものだった。想像が膨らんで、リーゼロッテにとっては恐怖の大魔王のような存在となっていたのだが。
今、目の前にいるジークヴァルトは、黒い笑みを浮かべているものの、整った顔の普通の青年に見えた。
「しかも、随分と懐かしいものをつけている」
不意にジークヴァルトがリーゼロッテの胸元のペンダントを掴んで引きよせた。
「ぁふっ」
胸元にジークヴァルトの指がわずかに触れて、リーゼロッテの口から変な声がとびだした。
ジークヴァルトはそのままの流れで、ペンダントの石に唇を寄せていく。ペンダントの鎖はそれほど長くはないため、ジークヴァルトの黒髪が、リーゼロッテの頬や首筋、鎖骨のあたりをくすぐった。
(この方が、ジークヴァルト様……なのよね。お顔も、ジークフリート様に似ているし……)
記憶の中のジークヴァルトは、まだ子供で、黒いモヤのかかった得体のしれないものだった。想像が膨らんで、リーゼロッテにとっては恐怖の大魔王のような存在となっていたのだが。
今、目の前にいるジークヴァルトは、黒い笑みを浮かべているものの、整った顔の普通の青年に見えた。
「しかも、随分と懐かしいものをつけている」
不意にジークヴァルトがリーゼロッテの胸元のペンダントを掴んで引きよせた。
「ぁふっ」
胸元にジークヴァルトの指がわずかに触れて、リーゼロッテの口から変な声がとびだした。
ジークヴァルトはそのままの流れで、ペンダントの石に唇を寄せていく。ペンダントの鎖はそれほど長くはないため、ジークヴァルトの黒髪が、リーゼロッテの頬や首筋、鎖骨のあたりをくすぐった。