僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい

 黒縁のメガネをかけていて、髪の毛が短い。髪の毛は黒髪と白髪が混じっていて、身長は百七十センチほどの俺より少し低いくらいだ。切れ長の瞳と、鼻筋の通った綺麗な顔が真面目そうな雰囲気を醸し出している。

「蓮夜か?」
「え、はい」
「ずっと会いにこなくてすまなかった。俺は加藤拓人。蓮夜の父親だよ」

「父さん?」
 今更父親に会っても、なんて言えばいいのか全然わからなくて、俺はただそう呼ぶことしかできなかった。

「ああ。飾音のことは紗里から聞いた。ごめんな、蓮夜」

 拓人さんって、母さんのこと名前で呼んでいたのか。

 拓人さんが俺のことを抱きしめる。紫月さんが俺の肩を掴んで、拓斗さんを無理に俺から引き離した。
「すみません、俺は今まで拓人さんが何をしていたかも知りませんが、一言言わせてもらっていいですか。虐待から救わなかったくせに、蓮夜を抱きしめないでください」

 背後にいる紫月さんを見る。紫月さんは氷のように冷たい瞳をして、拓人さんを見ていた。

「義勇、そんな言い方」
「すみません、大地さんは黙っていてくれませんか」
 大地さんは紫月さんを見つめてから、口を閉じた。

「すみません。感情が昂って、出過ぎた行動をとりました。紫月さんですよね?」
 拓人が紫月さんに軽く頭を下げる。
「はい」
「この度はうちの飾音がとんだご迷惑を! 本当に申し訳ありませんでした‼︎」
 拓人が九十度くらい深く頭を下げる。

「いえ、蓮夜が無事でよかったです」
 そう言って、紫月さんは俺の頭を撫でた。
姿勢を正して、拓人さんは口を開く。

「飾音のことはこれから、仕事を休んで二人がかりで説得しようかと思います。飾音がそれで改心するかは、分かりませんけど」
「ただ説得するだけじゃ、きっと意味ないです」
「私はそんなふうには考えたくない。ちゃんと丁寧に話し合いを重ねれば、飾音はいい子に戻ってくれると信じたいんです」

 俺もそう信じたい。でも、虐待をするのがあんな子供のわがままみたいな理由じゃ、説得するだけでどうにかなるとはとても思えない。

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