僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい
「ただ自首をさせて刑務所に入れるだけではダメだと思うんです。せめて飾音が蓮夜に暴力を振るわないような子になってから刑務所に連れていかないと、釈放したらまた蓮夜に暴力を振るうかもしれない、そう思ったんです」
母さんが紫月さんに言う。
「確かにあれは自首をする気がなさそうなので、話はした方がいいかもしれませんね。では蓮夜の姉のことはお二人に任せます。蓮夜のことはどうするつもりですか。できれば、このまま俺に育てさせて欲しいのですが」
拓人さんが俺に近づく。
「蓮夜、父さんと一緒に暮らす気はないか?」
「え?」
拓人さんから顔を背けて、紫月さんを見る。
「……拓人さんと暮らしたいなら、拓人さんと暮らしていい。でも正直言うと、俺は蓮夜を手放したくない」
「俺も、紫月さんと一緒にいたい」
拓人さんと暮らした方がいいのかもしれない。でも、『紫月さんと拓人さんのどちらかを選べ』って言われたら、俺は紫月さんを選びたい。
「そうか。……蓮夜、そしたら定期的に、会いに来てもいいか? ご飯でも食べに行こう。もちろん、紫月さんも一緒に」
「俺はそれなら、全然構わないです」
紫月さんが拓人さんに言う。
「蓮夜、ダメかな?」
「ダメじゃないけど、……説明して欲しい。今まで何をしていたのか」
「ああ、それはもちろん説明する」
俺の瞳をまっすぐ見つめて、拓人さんは言った。
「それなら、俺も行く」
「ありがとう、蓮夜」
そう言って、拓人さんは嬉しそうに頬を赤らめて笑った。
「俺の家の住所はあとで、蓮夜のスマホからラインで送ります。すみませんけど、今日はもう失礼します。まだ朝の十時ですし、四人でお昼を食べに行くのはあまりに早いと思うので」
四人? 大地さんを抜いて四人ということだろうか?
「確かにそうですね。では、今日は私達もこれで失礼します。紫月さん、この度は本当にすみませんでした」
「……俺に謝る暇があったら、蓮夜に土下座でもしたらどうですか。あなた方はとても、親なんて呼べない。蓮夜もそれがわかっているから、俺を選んだんですから」
「お義父さん、俺は別に土下座なんて」
「お義父さん? 違うだろう、蓮夜。お前の父親は俺だ」
「……血縁上は、そうですね。でも蓮夜は俺を父親だと思っています。拓人さんじゃなくて、俺が蓮夜を虐待から救ったから」
「だとしても親戚でもない紫月さんのことをお義父さんと呼ぶなんて変です! 馬鹿げている」
「拓人、落ち着いて。今の発言は紫月さんだけじゃなくて、蓮夜にも失礼よ」
「落ち着いていられるか! 蓮夜は赤の他人を、父親だと言ったんだぞ? 父親は私だ!」
声が枯れる勢いで、拓人さんは叫んだ。拓人さんの叫んでいる姿が、姉ちゃんが怒っている姿に見えてしまった。もしかしたら親が親なら子も子とは、こういうことを言うのかもしれない。