僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい

「蓮夜、後ろにタクシーいるか見られるか? 怖いと思うけど、できたら確認して欲しい」

「わかった」
 ゆっくりと後ろを向いて、窓に映る景色を見る。俺たちの真後ろを、赤い車が走っていた。赤い車の後ろには、快晴の空のように青い色をした車があった。
 姿勢を元に戻して、俺は口を開く。
「真後ろと、そのさらに後ろはタクシーじゃないけど、それ以外は見えない」
「それだけで十分だ。大地さん、これなら」
「ああ、多分、追われてない」
 追われてない? どうして今の俺の言葉だけで、それがわかったのだろう?
 紫月さんと大地さんのやりとりを聞いて、俺は思わず首を傾げた。

「確かに、それならまだ追われてない、もしくは追いついていない可能性が高いですね」


「蓮夜、『なんでわかったの?』って顔をしてるな?」
 紫月さんが後ろを向いて、俺に笑いかける。

「うん」

「蓮夜、黒い車って、珍しいと思うか? それとも、在り来りだと思うか?」
 ミラーに映る紫月さんは腕を組んで、楽しそうに歯を出して笑っていた。

「えっと、在り来り?」

「正解。じゃあ次の質問。色以外で、車を見分けられるものってなんだと思う? ただしこれは、さっきの蓮夜みたいに、車を高い位置から見ている時には見えないものだ」
「そしてそれは一つも、同じものはない」

 大地さんが紫月さんの言葉に付け足すように言う。

「大地さん! クイズなんですから、簡単にしないでください」
 抗議するみたいに、大きな声で紫月さんは言う。

「はは、悪い。蓮夜くん、答えわかった?」

「車のナンバーですか?」
 紫月さんが不服そうに髪の毛をぐしゃぐしゃといじる。ミラーに映っている紫月さんと、目が合った。紫月さんがため息を吐いてから、俺に笑いかける。

「はあー。正解。タクシーの運転手に車を追いかけるのをお願いする時は、目の前にある車を追いかけてくださいっていうか、ナンバーを伝えるのが一番手っ取り早い。で、俺達の後ろにある車は少なくともタクシーじゃなかった。じゃあ、次の質問。あいつがナンバーを把握している可能性は高いと思う? 低いと思う?」

 あいつって、拓人さんのことか。

「え、どうなんだろう。ナンバーを見る時間自体はあったと思うけど、確率って言われるとわかんない」
「俺も正確にはわからない。ただまあ、怒って冷静さを失っている奴が、追いかけるんだからナンバーを見ないと!って、思えるかって考えたら、いまいちそう思えない気がするんだよ」

「確かにそうかも」

「だろ? それが、追われてない可能性が高い理由。まあ絶対にナンバーが見られてない確信はないが、とりあえず今は、多少は気を抜いてスイーツの店に向かっても大丈夫だ」

「そっか」
 つい、ため息が溢れた。よかった、拓人さんより俺達の方が有利な可能性が高くて。

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