僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい
「お母さん、今の内に、離婚の理由をお聞きしてもいいですか?」
紫月さんが言う。
「え、紫月さん、どうして、離婚だとわかったのですか?」
「すみません、蓮夜からそう聞きました」
「そうですか。……離婚をしたのは、私が拓人に手を上げられたからです。拓人は基本的にとても穏やかなのですが、何かトリガーがあると、すぐに人に手を上げてしまいます。そのことが理由で、別れました。拓人と交際をしていた時の私は、拓人の穏やかな面しか知らなくて、結婚をしてから、彼がDVをする人だと気づいたんです」
「……離婚をしてからも、会っていたんですか?」
紫月さんの問いに、母さんが頷く。
「はい。蓮夜と飾音の学費と生活費を、貰いに行っていました。月に一回くらいの頻度で」
「その時に手を挙げられたことは?」
「それがないんです。私が拓人に手を挙げられたのは、離婚を決意したあの日だけなんです。でも、職場の人に電話で暴言を吐いていたのは何度か見たことがあります」
紫月さんが腕を組む。
「すみません。お母さん、暴力の内容を聞いてもいいですか?」
「蓮夜が生まれる前にされたことなので覚えていることは二つだけで。私が離婚をするように言ったら、拓人は私の左手に薬指にあった婚約指輪を、指ごと燃やしたんです。彼は私を少し脅すつもりでそれをやったので、燃やしたのはたった十秒ほどでしたが、それでも相当、痛かったです。あと、離婚届をカッターでビリビリに破られました」
え? ……俺と、同じだ。
「……俺、姉ちゃんにスケッチブックをカッターで破られたことある」
紫月さんが振り向いて、俺の顔を覗き込む。
「本当か、蓮夜」
「うん」
紫月さんは大地さんと目が合うと、慌てて前を向いた。