僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい
「着いたぞ、義勇」
「あ、はい。運転、ありがとうございました」
大地さんの言葉を聞いて、紫月さんは慌てて俺の身体から手を離した。
「ああ。義勇、ホテルにはもう戻らなくていいか?」
「はい」
「なら先に三人で店に入ってろ。これでお前の分の金払っていいから。俺はホテルに戻って、三人分まとめてチェックアウトしてくる」
大地さんが紫月さんに五千円札を差し出す。
紫月さんは勢いよく首を振った。
「は? 拓人さんがホテルの前にいたらどうするつもりですか? 俺も一緒に行きます」
「アホ、お前が蓮夜くんのそばにいなくてどうするんだよ。大丈夫だよ、危なくなったらすぐに逃げるから」
首を振って、大地さんは言った。
「でも……」
「紫月さん、私が大地さんと一緒に、ホテルまで行きます。拓人は私には暴力を振るってこない可能性が高いので、拓人がホテルにいた場合は、私が盾となって、大地さんを守ります」
「ダメです、そんなことをしては」
紫月さんを見て、母さんは笑う。
「ご心配ありがとうございます、紫月さん。でも大丈夫です、私はあの日から一度も、暴力を振るわれていないので。それに、これはお詫びですから」
「お詫び?」
「はい。今日起きたことは全て、私が招いたこと。私が『拓人ならきっと私と連夜の味方になってくれる』って思って、飾音のことを拓人に話して、拓人をホテルに連れてきたから、こんなことになってしまった。そのお詫びをさせてください」
「……わかりました。危なくなったら、ちゃんと逃げてくださいね」
紫月さんは母さんにしっかりと釘をさしてから、大地さんからお金を受け取った。
「はい、もちろんそうします」
「母さん、気をつけて」
「ええ。ありがとう、蓮夜」
俺の頭を撫でて、母さんは笑った。どうか拓人さんが、ホテルにいませんように。俺はそう思いながら、シートベルトを外して、後部座席のドアを開けた。