僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい
緊張していたらあっという間に家に着いた。シートベルトを外していたら、俺より一足先に車から降りていた大地さんが、後部座席のドアを開けてくれた。
「あ、大地さん、すみません。もしかして、紫月さんに頼まれました?」
大地さんに体を支えられながら、俺は車から降りた。
「ああ。自分も怪我人なのに蓮夜くんのことばかり心配していて、全く困ったもんだよ」
紫月さんに呆れているかのような態度で、大地さんは言った。
母さんが車から降りて、俺の隣にきた。
「そうなんですね」
大地さんの言葉に相槌を打ってから、顔を伏せる。
「まあ、昔よりは自分のこと大切にするようになったとは思うけどね。煙草を吸う量も減らしているみたいだし」
「昔はどれくらい吸っていたんですか?」
「多分一日一箱とか。今は多分、一週間で一箱無くなるくらいにはなっている」
「え、えらい違いですね?」
ヘビースモーカーだとは思っていたけど、まさかそんなに吸っていたとは思わなかった。
「ああ、俺もびっくりだよ。蓮夜くんが義勇を変えたのかもしれないね」
「ちょっと大地さん、そういうこと本人に言わないでください」
運転手席のドアにもたれかかっていた紫月さんが、大地さんに言う。
「え、俺、たいしたことしていませんけど」
「えーそんなことないだろ。なあ、義勇」
「まあそうだな。蓮夜のことを守りたいと想ったから、自分のことをある程度大切にできるようになったとは思う」
「俺、お義父さんの役に立ってる?」
「もちろん」
そう言って、紫月さんは歯を出して笑った。
「開けますよ、蓮夜、紫月さん、大地さん」
母さんが家のドアの前に行って言う。母さんは肩にかけたバッグの中から、キーケースを取り出していた。……姉ちゃんに会うの、怖いな。紫月さんは何も言わずに、ぽんぽんと俺の頭を撫でた。
キーケースについている鍵を鍵穴に差し込んで、母さんはドアを開けた。