僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい

「アハッ、アハハ、ハハハハ!」
 突然、玄関に笑い声が響き渡った。
 ダイニングのドアが開いた。拓人さんがダイニングから出てきて、玄関に来る。

「ダメだ、黙って話聞いてようかと想ったけど、やっぱり無理だった。蓮夜、お前の父親は私だ。そしてお前は、飾音の弟だ。そうだろう?」

「……俺は拓人さんを父親だと想ったことなんか、一度もない! 姉ちゃんのことだって、今は大好きだなんて言えない!」

「じゃあ今はどう想っているの?」
 姉ちゃんが薄ら笑いを浮かべて、首を傾げる。

「今は……姉ちゃんが化け物に見える」

「化け物はあんたの方よ! あんたが私からダンスを奪い取った!」

「う、奪ってなんかない!」
 姉ちゃんが走って、ダイニングに入る。嫌な予感がした。姉ちゃんは包丁を持って、廊下に戻ってきた。

 は? 意味がわからない。怖すぎる! 

「あんたのせいで、私は踊れなくなったの! 事故に遭った私のそばで、のうのうと生きているあんたが憎い。私と違って、手も足も不自由なく動かせるアンタが羨ましい。私からダンスを奪い取ったくせに、お母さんにも、お兄さんにも好かれているあんたのことが、殺したいくらい憎い!」


 姉ちゃんが走って、俺のところに向かってきた。姉ちゃんは完全に冷静さを失っていた。
 マズい。俺の前には紫月さんがいるから、このままだと紫月さんに包丁が刺さってしまう!

「お、落ち着いて飾音」

「うるさい! お母さんに、私の何がわかるって言うのよ!」

 姉ちゃんが叫びながら、紫月さんに向かって行く。

「お義父さん!」
「義勇!」
「紫月さん!」
 紫月さんは刃先を掴んで、包丁と、姉ちゃんの動きを無理に封じた。
 紫月さんの手からは、血が流れていた。

「えっ、お、お義父さん……」

「大丈夫、たいした傷じゃない。……目が覚めたか、飾音。お前、俺が今ここにいなかったら、絶対に蓮夜のことを殺していたぞ」   
包丁から手を離して、紫月さんは言った。
 姉ちゃんが紫月さんの後ろにいる俺を見て、口を開く。
「うるさい、蓮夜なんか死ねばいいのよ! こんな弟いらない、生きているのを見るだけで腹が立つ。こんな奴が弟になるくらいだったら、一人っ子になった方がまだマシだった!」

 
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