僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい
信じられない憶測を思いついてしまった。それは、考えただけで鳥肌が全身に立つくらい恐ろしくて、凄惨な内容だった。自分の顔が青ざめているのが、鏡を見なくてもわかる気がした。これが真実だったら、辛いにも程がある。
「蓮夜、大丈夫か? 顔色、ひどいぞ」
紫月さんが真正面から俺の顔を見る。顔が真っ青だ。それに、唇も紫色だ。
「お義父さんも、悪いよ」
「内容が内容だからな。……蓮夜、何を思いついた?」
「えっ、俺が聞いて、いいんですか?」
つい敬語になってしまった。
こんな話、絶対に俺が聞いたらダメだろう。紫月さんと弟さんの心の中にだけ、とどめておいた方がいい話じゃないか?
「いいよ。むしろ聞いて欲しいんだ、蓮夜に。この話は、一人で抱えるにはあまりに重すぎる」
顔を片手で覆って、紫月さんは言った。指の隙間から見える肌が濡れていた。泣いているのだろうか。
「まさか弟さんが、お義父さんの両親を」
その先は、言えなかった。
「ああ、殺したのかもしれない。両親が試合会場に行くのを阻止するためだけに」
その声はとても震えていて、頼りがいのない子猫のように弱々しかった。
「そんな……」
「俺もこんなこと考えたくない。でも、そう考えざるをおえないんだよ。だってあの日、家には俺の弟と、両親しかいなかったハズなんだから。弟以外に、両親を殺せる奴はいないんだ、一人も」
紫月さんの手が、小刻みに震えていた。