僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい
翌朝。俺は朝食を食べてから、紫月さんと一緒に、買ってもらった服の整理をしていた。服の整理は紫月さんが俺の服を弟さんのクローゼットに入れようと言ってくれたから、することになった。
「弟さんの服、本当に出しちゃって良いの?」
クローゼットの中にあるビニール袋を見て、俺は首を傾げる。ビニール袋には相変わらず、弟さんの服が丁寧に折りたたまれて入っていた。
「ああ、いい。ずっとここに入れとくわけにもいかないからな」
ビニール袋を眺めて、紫月さんは作り笑いをした。
「いい加減、処分した方がいいのかもしれないな」
「処分はしなくてもいいんじゃないかな。弟さんが目覚めた時に、なかったら困るし」
「そうだな。もう少し、残しておくか」
ビニール袋の中にあった弟さんの服を一つとると、紫月さんはそれを、猫を撫でるかのような仕草で触った。
「お義父さん、俺、弟さんの服、お義父さんの部屋持ってこうか?」
「あ、蓮夜、それは俺が行く」
弟さんの服を素早くビニール袋に戻して、紫月さんは言う。もしかして、俺に見られたら困るものがあるのかな。
「煙草の吸い殻ある?」
ふと思いついたので試しに言ってみると、紫月さんはあからさまに顔を顰めた。
「はあ。なんでわかるんだよ。そう、買い溜めした煙草の箱と、まだ捨ててない吸い殻がある」
「俺、気にしないよ?」
別に煙草の匂いを嗅いだら、すぐに病気になるわけでもないだろうし。
「いやそこは気にしてくれ。がんにでもなったらどうするんだ」
紫月さんがそれを言うのか?
「がんになりそうなのはお義父さんじゃないの?」
「はは、まあな。いい加減、禁煙しないとだよな。今は怪我のせいで吸うなら誰かにライターの火をつけてもらわないと吸えないし、この機会に禁煙するのもありかもしれないな」
「本当? それなら俺、お義父さんが煙草吸おうとしたら、止めようかな」
「はは、そうだな。そうしてもらえると助かる」
紫月さんがドアを開けてから、ビニール袋の結び目を掴む。俺はビニール袋の膨らんでいるところを掴んだ。袋を持ったまま、弟さんの部屋まで二人で行く。
ビニール袋を部屋の隅に置いたら、紫月さんは案の定煙草を吸おうとし始めた。俺はそれを止めて、紫月さんの手を引いて、弟さんの部屋に戻った。