僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい
弟さんのクローゼットにある埃を箒で払ってから、机のそばにある服を一つひとつハンガーにかける。ハンガーはさっき紫月さんの部屋から持ってきたものだ。服は十着くらいだからタンスにしまわないで、クローゼットの上の方にある棒にかけるのが一番いいんだよな。
「悪いな、蓮夜。なにもかもやらせて」
椅子に座っている紫月さんが、俺に声をかけてきた。
「気にしないで。これくらいどうってことないから」
服がかかっているハンガーを棒にかけながら、俺は言葉を返した。
「スケッチブックはどこにしまう?」
机の中央にあるスケッチブックを見ながら、紫月さんは言った。
「あ、えっと」
「蓮夜用の棚でも買うか」
「えっ。買わなくていいよ。しまうものスケッチブックしかないし」
「今はそうだけど、これから増えるかもしれないだろ? この教科書みたいに」
紫月さんが立ち上がって、机の隅にある弟さんの教科書や辞書を触る。
「全部残してあるの?」
「いや、五教科だけ。蓮が目覚めたら、もう学校通い直すのは無理かもしれないけど、せめて高卒認定試験は受けさせてやりたいから、それならとりあえず五教科分だけ残しておこうかと思ってさ」
「教科書、全然ボロボロじゃないね」
教科書は相変わらず、少しも痛みがなかった。
「ああ、辞書も綺麗だぞ」
紫月さんが国語辞典の入った箱を手に取って、俺に渡す。俺は箱を受け取り、中身を取り出した。箱も中身も綺麗なのかなと思ったから取り出しただけだ。
「え?」
辞典と一緒に、縄が出てきた。十五センチくらいの縄だ。嫌な予感がした。紫月さんが英字辞典の入った箱を俺に差し出す。多分これも開けろと言っている。俺は何も言わずにそれを受け取り、中身をとった。また縄が出てきてしまった。