意地悪な副社長との素直な恋の始め方
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「ほんと……アンタは、ちょーっと目を離すと何かしらトラブルが発生してるわね。いつの間に家出なんかしてるのよ。しかも、月子さんと同居? 羨ましすぎて、殺意芽生えるわ」
「スミマセン……」
衝撃の電話事件からいままでのことを、芽依のことだけはボカシてざっと説明すると、シゲオはギロリとわたしをひと睨みしてハンカチ……ではなく、鮭トバを歯で引きちぎった。
昨日に引き続き、サヤちゃんの執拗な追及(昨夜の流星とのデート(仮)について)を逃れつつ、ハードな電話係をこなし、ヨレヨレの状態で京子ママのお店へ。
そこで当然のごとくシゲオにダメ出しをされ、化粧直しをされ。
ようやく美味しいビールにありつけた本日の女子会会場は、おしゃれなバーではなく、オヤジな居酒屋。
京子ママには、「うちで飲んで行けば? 新人バーテンダーの練習台になってくれるなら、タダでいいわよ?」との魅力的な提案をされたが、シゲオが丁重にお断りした。
しんどい恋の話をする場合、店のBGMは演歌でなくてはならない、なんていうこだわりは、正直さっぱり理解できない。
確かに、京子ママのお店にグダグダな恋愛話は似合わない、とは思う。
けれど、サラリーマンの悲哀やら慢性的な疲労やらをその肩に載せ、背中で演歌を聴くオヤジたちの憩いの場に似合うとも思えない……。
「でも、ま、月子さんのオファーを受けたことと、モデルを始めようと決心したのは、褒めてもいいわね。ポートフォリオのデータ、送ってあげるわ。わたしの名前もちゃーんとアピールしておいてよね?」
「うん」
恋にも仕事にもアグレッシブなシゲオは、常に新たな技術や人脈、伝手を得られる機会を逃さない。
そんな彼(彼女)の姿勢を、これからのわたしは、いっそう見習わなければならないだろう。