意地悪な副社長との素直な恋の始め方
わたしが退職したいと話した時、居候を解消して、再び友人とルームシェアすると話した時、夕城社長も月子さんも、どうして、と問うことはなかった。
けれど、二人とも、わたしと朔哉の仲がどうなっているのか、心配してくれているのはわかっていた。
ただ、わたしの口から何があったのか、説明しようとは思わなかった。
芽依の行動に言及せずに、上手く説明できる気がしなかったし、わたしが説明すれば、言い訳にしかならない。
月子さんと夕城社長、朔哉と芽依の四人は、法的な形はどうであれ、いまも「家族」だ。
家族ではないわたしとの縁は、切ろうと思えば切れる。
でも、家族である彼らの縁は、きっと切ろうと思っても切れない。
だから、四人の仲が拗れないように、朔哉なり芽依なりが、都合のいい話をしてくれれば、それでいい。
そう思った。
朔哉が、芽依との関係を「兄妹」以上のものにするつもりがあるのかどうかは、わからないけれど、彼は自分の生活から、テリトリーから、わたしの存在を、痕跡を消した。
この先の人生に、わたしは必要ないと思ったからだ。
望まれていないのに、その心に、傍に、居座ることはできなかった。
ひとは、「ある」状態に慣れるように、「ない」状態にも慣れる。
どんなに辛くて苦しくても、やがて慣れる。
それが、いいことか悪いことかは、別として。
「それじゃ、いってきまーす」
「いってらっふぁい、おやすみなさーい」