意地悪な副社長との素直な恋の始め方

「そういえば、コウちゃん。今日の撮影、浜本さんが撮ってくれたんだよ?」

浜本さんとは、顔見知り以上の交流があるらしいコウちゃんは、目を丸くし、次いでニヤリと笑った。


「浜さんか。すっごい美人に撮ってくれたでしょ? あのひと、女性を撮るのが上手いから」

「うん。すごくやりやすかった。浜本さん、コウちゃんはマルチで活躍するいい師匠だって、褒めてたよ」

「またまたぁ……」


コウちゃんは、先日わたしが撮ったデジタルデータやフィルムをキャビネットから出してくれながら、苦笑いする。


「それでね、やりたい方向性が定まらない、テーマが見つからないなら、いろんなコンテストに応募してみたらどうかって言われて……何かオススメの、ある?」

「そうだねぇ……。俺は、偲月ちゃんは『ひと』を撮るのに向いてると思うけど、いろいろ挑戦するのも悪くはない。あ、ちょうどいい企画ものがあるよ! 化粧品会社が、投稿を募集しているんだけどさ……」


コウちゃんが紹介してくれたのは、「メイク」というテーマで撮られた写真を募集する企画だった。

大手化粧品会社が、「メイク」が与えるプラスの効果を知ってほしいと立ち上げたもので、プロ、アマ問わずに参加可能。
写真はインターネット上の特設ページで紹介され、読者投票にプロカメラマンやモデルなど審査員の評価を加えて、受賞作品を決める。

広告に採用される可能性もあり、プロを目指すひとたちの応募も多いようだ。
いま現在、サイトにアップされている写真のクオリティはかなりのもの。素人レベルではなかった。


「ひとりにつき、アップできるのは三作品まで。連作形式でも、単発でも、どちらでもかまわないから、自分なりのコンセプトを持って、撮影してみてもいいかもね」

「面白そう……」

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