意地悪な副社長との素直な恋の始め方


「おつかれ。偲月」

「……おつかれ」

「今日は、夜のお仕事がないそうだから、ジョージくんも誘ってみたの」


映画の撮影でヘアメイクのアシスタントを始めたシゲオは、京子ママのお店の仕事を半分、友人に肩代わりしてもらうよう、スケジュールを調整している。

いずれは、雑誌やショーなどの仕事もしたいと考え、いまから後任を仕込んでいるのだと言っていた。
きちんと目指すものがあり、そのために用意周到に準備をしつつ、チャンスが来たら絶対に逃さないその姿勢には、脱帽だ。


「ほら、おしぼり。最初はビールでいいわよね?」 

(しかも、女子力高いし)


わたしを自分の横に招き、おしぼりを差し出し、甲斐甲斐しくビールまで注いでくれる。


「ところで、メッセージの件。お願いって、なぁに?」

「あ、えっと、応募したい企画があって、シゲオに協力してもらえたらと思って。大手化粧品会社がやってる、『メイク』をテーマにした写真を募集するっていう……」

「それ、知ってるわ。メイクアップアーティストを目指す人たちも注目してる企画よ。わたしにとってもいい挑戦になるし、協力するわよ? モデルが必要なら、京子ママに頼んでみてもいいかもね? 化粧映えする子が多いから」


意外なところを推薦され、「確かに」と思った。
京子ママのお店で働く女性たちは、メイクでガラリと雰囲気が変わる。


(いいかも)

「うん、話してみる。撮りたいシーンとか、いろいろ具体的にまとめてから、打ち合わせさせてもらってもいい?」

「もちろんよ。アンタのデビュー作になるかもしれないんだから、全力で応援するわ」


持つべきものは、やはり(女)友だちだ。


「ありがとう、シゲオぉ!」

「ちょっと! やめなさい、離れなさいよ! わたしに触れていいのは、イケメンだけなのよ!」


イケメンだけに抱きしめられたいと、イヤがるシゲオに無理やりハグをしていると、ぐいっとTシャツの裾を引っ張られた。

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