意地悪な副社長との素直な恋の始め方


信じたくない。
信じたくないけれど、叫んだのは自分だし、あの時電話していた流星が、ぎょっとした表情になり、やけに慌てて電話を切った姿も記憶にある。


(本人に聞かれてた……大キライって言ったの……聞かれてた……サイアク……)

「でも、ま、よかったんじゃないの?」

「何がっ!? どこがっ!?」


この状況に、イイトコロなどひとつも見つけられない。
掴みかからんばかりに詰め寄るわたしに、シゲオは苦笑いする。


「喧嘩するほど仲が良いって言うじゃない? ようやく、アンタの中にあった壁を突き崩せて良かったじゃないの」

「壁? 壁ってなに? 良くない! ちっとも良くないっ!」

「大騒ぎするようなことじゃないでしょ。喧嘩したなら、仲直りすればいいだけ。夫婦喧嘩は犬も食わぬと言うし。距離が近ければ近いほど、摩擦も起きるし、あっちこっちぶつかるのは当然よ。そうやってぶつかりあうことで、そのうちお互いの角が取れて、丸く収まるようになるものなのよ。友だちだって、角突き合わせて、ぶつかりあっていた相手の方が、いつでも仲良しこよしの相手より、ずうぅっと気心知れた親友になったりするものじゃない?」


シゲオが深刻に考えることはないと言うのは、実際喧嘩して仲直りをする、というプロセスを何度か経験しているからで、それは珍しくとも何ともない経験なのだろう。

でも、わたしには、とてつもなくハードルが高い。

何せ、一度も誰かと――元カレはもちろん、友だちとだって、そんな風にガチの喧嘩をしたことなんかないのだ。
いわば、あれは喧嘩デビュー。

でも、そんなことを言えば、「コイツ、何言ってんの?」的な目で見られそうな気がする。
それでも、やっぱり相談できるのはシゲオ以外にはいない。
ここは、恥を忍んで訊くしかない。

でも、とても目を合わせられず、俯きがちにぼそぼそと訊く。


「仲直りって……どうやってするの?」

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