意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「……は? いま何つった?」
「その……謝れば、それで仲直り……できるものなの? ほかに何か方法がある?」
「…………」
たっぷり三十秒は沈黙が流れ、ようやく返ってきた答えは、期待していたようなものではなかった。
「そうね。一番手っ取り早いのは、エッチすることね」
「エッ……」
思わず顔を上げ、本気で言っているのかとマジマジ見つめてしまう。
「ヒートアップして、その勢いですると、結局なんで喧嘩してたのか、どうでもよくなるでしょ?」
「え。そ、そう?」
「そうでしょ」
「…………」
セフレのような関係だった時は、意地の悪い朔哉に腹を立て、言い合いのようなことをしながらコトに及んだことも数知れず。
しかし、あの程度は喧嘩とも呼べない、じゃれ合いの域を出ないただの言葉の応酬だ。
「アンタは、何だかんだ言って朔哉に弱いから、なし崩しで押し倒されてたんでしょうけど。それでもって、キスされてメロメロになってたんだろうけど」
「う……」
その通りだ。
ささくれだった感情は、朔哉のキス一つで治まるし、触れられれば理性はあっけなく蕩けるし、肌を合わせてしまえばそれ以外のことはどうでもよくなってしまう。
「質が悪いのよね、自分がイケメンだって自覚しているイケメンって。好意を寄せられることに慣れているから、自分が相手に好かれているかどうかを簡単に嗅ぎ分けられるし。いままで朔哉が、多少偲月とすれ違っても、どこかで大丈夫だと余裕かましていられたのは、素直じゃないアンタの本音を、素直過ぎる身体の反応から感じ取っていたからでしょうねぇ……。でも、」
「で、でも?」
「好きでも傍にいたくない、いられないって言われたら、そんな自信は何の意味もなくなるわ。しかも、自分よりもアンタが頼りにする存在がいるとなれば……不安、焦燥、嫉妬に見舞われて、大ダメージを食らって、すっかり萎れて、どうしていいかわからずにいるんじゃないかしらね?」
「まさか」