意地悪な副社長との素直な恋の始め方
面白がっているような、ひとの悪い笑みを見せるシゲオの分析も、俄かには信じられない。
朔哉だって人間だから、落ち込んだり、不安に感じたりすることはあるだろう。
でも、自信の塊のような彼が、萎れている姿なんて想像もつかない。
「朔哉は、アンタが思っているよりも、ずうっとアンタのことを好きなのよ。それでもって、アンタに振り回されている自分に腹が立って、時々意地悪しちゃったり、ついつい感情に任せて怒ったりしちゃうんだと思うけど?」
「意地悪なのは、時々じゃない。いつも。九十九パーセント意地悪なの!」
甘々モードの朔哉なんて、短い同居生活でしか見ていないし、それだってずっとそのままというわけではなかった。
基本意地悪ベースで、甘々モードは気まぐれにくっ付いてくるオプションだ。
シゲオは、そんなわたしの主張を軽くいなす。
「愛のある意地悪でしょ。いいじゃないの、細かいことは。とにかく、性悪女の化けの皮も剝がれたんでしょ? だったら、前よりも状況は単純じゃないの」
「どこが?」
前よりも拗れているだろうと喉まで出かかったが、シゲオのひと言で呑み込んだ。
「上手くいかないのを、誰かのせいにはもうできないってこと。仲直りするのも、このまま破局するのも、アンタと朔哉次第ってことよ。アンタは、おバカなくせにアレコレ考えすぎなの」
「…………」
朔哉のことを「大キライ」と叫んではみたけれど、本当にキライになったわけじゃない。
あれは、彼のことが好きすぎて、そのせいで苦しくて、いわばその反動だった。
でも、じゃあその言葉を取り消して、言い過ぎたと謝れば、すべて丸く収まるのかといえば……そういうわけでもない気がする。
どうするのが正解なのか、どうすればいいのかわからない。
だから考えてしまうのは仕方ない、という反論は、視界の端にこちらへやって来る月子さんの前では言えなかった。
「偲月さん、ジョージくん! よかったらコレ、食べて?」
「これ……」