意地悪な副社長との素直な恋の始め方


手から飛んで行ったスマホは、歩道脇に植えられたツツジたちにダイブ。
生い茂った葉の中へ沈んでいった。


(こんな時にぃぃっ! 水没じゃないだけ、マシだけどっ……だけどっ!)


茂みを覗き込み、腕を伸ばしてスマホを探る。

完全に不審者だ。

ややしばらく格闘し、何とか無事スマホを拾い上げて、ホッとした。


(とにかく、電話。連絡、報告、相談は基本中の基本。電車が止まったのは、不可抗力だし……)


しかし、アドレス帳を呼び出し、電話を架けようとタップした瞬間、ディスプレイに不吉なサインが現れる。


(充電、してください……?)


無情にも、それきりスマホの電源が落ちた。


(な、なんでぇっ!? 昨日、充電したよねっ!?)


スマホは、いつも帰宅したらすぐに充電している。
寝るときは、アラーム代わりにして枕元に置く。

それは昨夜も一緒で、いつもとちがったことといえば……。

今日のことを考えるとなかなか寝付けず、ついつい「観覧車デートでキスする方法」なんかを検索。
そこから「彼と仲直りする方法」なんてものも気になって、十人十色、千差万別の仲直りの方法に感心したり驚いたり。
シゲオが言っていた方法がけっこう有効なんだということも発見し。
でも、あれだけ派手にやり合っておきながら、あっさり仲直りするのもどうかと思い、今度は「喧嘩の原因ランキング」なんてものも検索してしまい……。

そのまま、


(寝落ちした……それっきり、充電……してない……)


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