意地悪な副社長との素直な恋の始め方


「夜景に興味はない」

「だとしても、目をつぶらなくたって……」

「目をつぶっていても、会話はできるだろ」

「そうだけど、でも、」


もしかして、という考えが脳裏をよぎり、そっと立ち上がる。

僅かにゴンドラが揺れた瞬間、朔哉に叱られた。


「動くな、バカっ! 落ちる!」

「え。いや、落ちないってば」

「百パーセント、大丈夫だという保証はどこにもないだろうが!」


ムキになって言い返す彼の横に座り、引きつったその顔を覗き込む。


「ねえ、朔哉。もしかして……高所恐怖症?」

「……ちがう。高いところが好きじゃないだけだ」

「それを高所恐怖症って言うんだけど。言ってくれれば、観覧車に乗ろうって誘ったりしなかったのに」

「我慢できないほどじゃない」

「我慢してまで、付き合ってほしくない」

「……偲月がしたいこと、やりたいことがあるなら出来る限り叶えたい」

「その気持ちは嬉しいけど、無理しなくてもいいのに」

「無理じゃない」


膝の上で、硬く握りしめられた彼の手に触れると、驚くほど冷たい。


「ごめんね? 月子さんに、朔哉が観覧車に乗るプランを実行したら、話を聞いてあげてって言われたから……何か、特別な理由があるんだと思って」

「俺が、観覧車は苦手だと言ったから、わざとだろ……」

「月子さん、知らないの? 高所恐怖症だって」

「だから、そこまでじゃないんだ。夜なら、比較的平気だ」

「比較的、ね」

「…………」


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