意地悪な副社長との素直な恋の始め方
出来たばかりの頃は、行列ができるほど混雑していたらしいが、すっかり夜のデートスポットとして定着したいまは、それほどでもない。
一周分のチケットを購入し、ゴンドラに乗り込む。
何となく、照れくさいような、恥ずかしいような気持ちに駆られ、窓の外を見てしまう。
「今日は天気もいいし、遠くまで夜景が見えるね?」
「ああ」
「観覧車って、あんまり乗る機会がなかったけど、ゆっくり景色を楽しめるし、ある程度プライバシーも守られるし、意外といいかも」
「そうだな」
「観覧車と言えば……高校生の頃、カレシと乗ったんだけど、カレシが高所恐怖症だってことが乗った後に判明して。途中で止めてもらうわけにもいかないし、何とか彼の気を逸らそうと笑える話をしながら、ずっと手を握ってた。わたしはぜんぜん気にならなかったんだけど、カレは情けないとか恥ずかしいとか思っちゃったみたいで……結局、ギクシャクして、一か月ももたずに別れたけど」
「おい……デート中に、他の男の話をするな」
「他の男の話って……高校生の頃のことでしょ? しかも相手の顔も覚えてないくらいで、付き合っていたと言えるかどうかも微妙なんだけど……って、朔哉。ねえ、なんで外見ないの?」
向かいに座る朔哉を見れば、なぜか目を伏せている。
せっかくの夜景を見ないなんて、もったいない。