意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「結果って……『共通点はどこにもありませんが、恋は理性で落ちるものではありません。本人たちが幸せならそれでいいのです』? ……ビミョーに、喜べないんだけど」
「偲月は、幸せじゃないのか?」
「……そんなこと言ってない」
「じゃあ、何が不満なんだ?」
俯いた偲月が、小さな声で答える。
「不満じゃ、ない。…………不安、なの。妊娠に気づくのが遅くて、何かいけないことしちゃったかもしれない」
偲月が本当に訴えたかったのは、マカロンが三ダース必要になることじゃない。
男には、たぶん一生理解できない感覚だとは思うが、想像することはできる。
自分の身体の中に、新しい命が宿っていて、それがいずれ生まれて来る――そう言われて、何の不安も抱かない方がどうかしている。
自分の内にあるということは、育むことも、傷つけることもできる。
故意に、ではなくとも。
「病院では、いまのところ問題はないって言われただろ?」
「でも、この先あるかもしれない。食べちゃいけないものとか、まちがって食べちゃいそうだし。体重管理も……ちゃんとしたダイエットとかしたことないから、できるか自信ない。わたし、意思弱いし」
「俺がちゃんと管理すればいいだけだ」
「え。ヤダ」
顔を上げた偲月がきっぱり断る。
「異議は認めない」
「ヤダ! だって、体重……知られたくないし」
「計らなくとも、見た目でわかる」
「……変態」
男は誰でも変態だ、と心の中でだけ反論しておく。
「それから?」
「それから……」