意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「わかったから、落ち着け。あっちで、座って話そう」
ボロボロと大粒の涙をこぼし、泣きだした偲月にいささか焦った。
やんわりとソファーの方へ誘導し、座らせようとしたが、ネクタイを握りしめられているため、膝の上に載せるしかなかった。
ここで「マカロンくらいで大騒ぎするな」などと言ってはいけないことくらいは、わかっていた。
妊婦を興奮させるのは、よくないことも。
「カロリーの低いマカロンが作れるか相談してみる」
「そんなこと……できるの?」
「プロなら、できるだろ。ちょっと時間が掛かるかもしれないが。その間、フルーツやヘルシーな素材で作られたクッキーなんかも、試してみたらどうだ?」
「……うん」
マカロンを諦めずに済むとわかったから、偲月は素直に頷いた。
「つわりが終わって、安定期に入ったらウォーキングやマタニティヨガとか、運動すればいい。出産にも産後の回復にも適度な運動が効果的だというし。ウォーキングなら、付き合える」
「うん!」
偲月は、さっき泣いていたのが嘘のように、嬉しそうに笑った。
ホッとしながら、福山が作ったアプリを見せる。
「ナニコレ?」
「相性を占うアプリだ。福山が結婚式で、手土産の一つとして配布するために遊びで作ったらしい」
「遊びで? 本物みたい」
「流通していないというだけで、紛れもない本物だ。自分と相手のプロフィールを入力して、占うと結果が表示される」
「ふうん……で、これ、わたしのこと? 元ギャル、注意!キレると危険ってどういうことっ!?」
アプリには「戻る」、ボタンなんてものがあったらしく、偲月がその通りにグイグイネクタイを引っ張る。
「まさにいま、そのまんまだろ……」
「ちょ、」
「文句は、占いの結果を見てから言え」