意地悪な副社長との素直な恋の始め方


「わかったから、落ち着け。あっちで、座って話そう」


ボロボロと大粒の涙をこぼし、泣きだした偲月にいささか焦った。

やんわりとソファーの方へ誘導し、座らせようとしたが、ネクタイを握りしめられているため、膝の上に載せるしかなかった。

ここで「マカロンくらいで大騒ぎするな」などと言ってはいけないことくらいは、わかっていた。
妊婦を興奮させるのは、よくないことも。


「カロリーの低いマカロンが作れるか相談してみる」

「そんなこと……できるの?」

「プロなら、できるだろ。ちょっと時間が掛かるかもしれないが。その間、フルーツやヘルシーな素材で作られたクッキーなんかも、試してみたらどうだ?」

「……うん」


マカロンを諦めずに済むとわかったから、偲月は素直に頷いた。


「つわりが終わって、安定期に入ったらウォーキングやマタニティヨガとか、運動すればいい。出産にも産後の回復にも適度な運動が効果的だというし。ウォーキングなら、付き合える」

「うん!」


偲月は、さっき泣いていたのが嘘のように、嬉しそうに笑った。
ホッとしながら、福山が作ったアプリを見せる。


「ナニコレ?」

「相性を占うアプリだ。福山が結婚式で、手土産の一つとして配布するために遊びで作ったらしい」

「遊びで? 本物みたい」

「流通していないというだけで、紛れもない本物だ。自分と相手のプロフィールを入力して、占うと結果が表示される」

「ふうん……で、これ、わたしのこと? 元ギャル、注意!キレると危険ってどういうことっ!?」


アプリには「戻る」、ボタンなんてものがあったらしく、偲月がその通りにグイグイネクタイを引っ張る。


「まさにいま、そのまんまだろ……」

「ちょ、」

「文句は、占いの結果を見てから言え」

< 514 / 557 >

この作品をシェア

pagetop