意地悪な副社長との素直な恋の始め方
ダニエルのおかげで、恐れていたようなぎこちない再会にはならずに済んだ。
芽依は、案内されたテーブルに向かい合って座るなり、近況を報告する言葉を連ねた。
仕事での失敗談、成功談。気の合う同僚のこと、先日の休みには国立公園まで足を延ばしたこと――。
ひと通り話した後、ふと言葉を切り、おずおずと訊ねる。
「あの、お兄ちゃん……。ダニエル、何か変なこと言わなかった?」
気まずそうに、俯きがちで視線をさ迷わせる様子が「元妹」を思い出させる。
(偲月も……こんな風だったな)
夕城の家で、兄妹として一緒に暮らし始めたばかりの頃、偲月は相当に挙動不審だった。
憎たらしく、生意気な言葉をまくし立てるくせに、ちょっとからかうと真っ赤になってうろたえる。
見るからにこちらを意識している様子に、自尊心をくすぐられた。
好かれているのだとうぬぼれるのに、十分なサインだった。
「変なことは言わなかったが、近々、挨拶に来たいと言っていた。たぶん、結婚の挨拶だろうな」
「えっ!?」
「返事を先延ばしにしていると、そのうち強硬手段に出られるぞ?」
芽依は真っ赤になりながら、問う。
「あの、お兄ちゃんは……どう思う? ダニエルのこと」
一瞬、さっき本人に言った通りの見解を口にしようかと思ったが、不安そうにこちらを見上げる芽依を見て、やめた。
迷っているのなら、助言はいくらでもする。
だが、もうその気持ちが定まっているのなら、背中を押すだけだった。
「芽依は、ダニエルが好きなんだな」