恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)

中央都市・宝石店・15時 12-12ページ

<中央都市・貸衣装屋・午後14時30分>

アルは車の外で、たばこをふかして待っていた。

テレーサが・・・
慣れていない、挙動不審(きょどうふしん)といったように・・
貸衣装の店から出て来た。

それでも・・・
薄手のサーモンピンクのドレスは幾重(いくえ)にもフリルが飾られていて、
華奢な体を美しく見せていた。

銀灰の髪はハーフアップにされて、同系のピンク色のベールのかかった
小ぶりの帽子、それには白の小花が飾られている。

化粧も頬紅の効果で
ピンクに頬が染まり、唇もやや紅めのピンクになっていた。

足元は華奢な白のピンヒールの
靴で、立ち姿を艶やか(あでやか)にしていた。

繊細な白のレースの手袋と、
小さな白のバック。

それはまるで、
ピンクのカーネションとかすみ草の花束のように可憐だった。

アルは少し見とれ、素直に感想を述べた。
「とてもきれいです・・」

アルは<俺の目には間違いはない>と感じていた。

「私は・・
きれいではありません・・」

珍しくテレーサが、強い口調で言った。
群青の瞳が揺れて、苦し気にアルにむかっていた。

「早く帰りたいので、すぐに・・・お願いします・・」
最後は消え入りそうな感じだったが。

<なぜだ?>
女は褒め(ほめ)られれば,
普通はうれしがるはずだが・・
アルは疑問に思った。

テレーサは怒り?憤り?戸惑い?
何かの感情を、必死で抑えていたようだ。

彼女にも感情があるのか?
人形のように見えたが・・・

「わかりました。すぐに行きましょう」
アルは彼女の反応に戸惑ったが、
たぶん修道院基準からはずれていたのだろうと判断した。

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