恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
確かにドレスは清貧ではない。
化粧も・・

でも、美しいものを美しく飾って
何が悪い?
アルの価値基準だった。
美しい女主人の元で働くのは・・・別の意味でもやる気がでるものだ。

知り合いの宝石商は、アルの期待通りの値段で買い取ってくれた。

交渉はすべてアルが仕切り、
テレーサがうなずく事で終始した。

帰り際に
「お前の今度の飼い主は、
若くて美人だな・・うらやましい」
と、
余計なことをささやいてきたが・・・

帰りの車中で
黒い喪服に着替えたテレーサは
目を閉じて、体調が悪そうだった。

顔色が青ざめていた。

アルは館の正面玄関に車を止めて、後部ドアを開けて手を差し伸べた。
「着きました。テレーサ様」

テレーサはやっとアルの手に
自分の手を乗せた。
その手は氷のように冷たかった。

「お疲れですね」
テレーサはしゃべるのもおっくうと言った感じで
「今日はありがとうございました」

そのまますぐに玄関扉を開けて、
中に入ってしまった。
「うーん」
アルは考え込んでいた。

明日は土曜日で仕事はないが、
月曜日にすぐに使えるように
車の修理はすませておきたい。


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