恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
しばらくして、
アルは客間の扉をノックした。
暖炉の火の状況を確認したい・・
という、名目で。

ノックをしたが・・反応がない。
静まり返っていたので、アルはそっと扉を開けた。

ゆっくりとベッドのそばに行くと、布団に埋もれるように
テレーサは眠っていた。

顔色は少し良くなり、呼吸はだいぶ楽そうに見えた。
・・・よかった。

アルは椅子を持ってきて、ベッドの脇に座りテレーサの顔を見た。
銀灰の髪が枕の上に広がっている。

眠れる森の姫君・・
先代の女主人の呪いが・・
まだかかっているのか・・

愛人の娘が幸せになることを
許さない・・・
生きる(しかばね)にしてしまう・・・

その呪いを解くのは誰だ・・・・
王子の俺の仕事か?
もう若いとは言えないが・・・
アルはため息をついた。

呪いを解くためにまずやることは・・
アルは立ち上がった。

アルは玄関ホールに置いてあった、あの奥方の肖像画を納屋の裏手に運んだ。
そして、
なたで切り刻み、火をつけて燃やした。

空に白い煙が立ち上っていく。
<あんたの呪いはもう終わりだ>

・・その煙を見ながら、アルはつぶやいた。


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