おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件
「最近、暗いのは男絡み?」

 ビールを飲みながら、ストレートに聞いてくる本城さん。

「あはははは」

 苦笑いしか出てこない。

「まぁ、神崎さんもいい年だから、そういうのもあってもいいと思うよ。でも、仕事に支障はきたさないようにね」
「……はい」

 チクリと胸が痛むけど、まだ、先輩たちに迷惑かけるレベルのミスはしてない……はず。

「まぁ、愚痴くらいだったら、聞いてあげるから」

 言える愚痴だったら、言ってるんだけど。というか、言わせてください、って言いたいくらい。

「まぁ、なんでも言えるんだったら、今頃、ここにいないか」
「えっ、いえ……」
「ごめんねぇ。私、あんまり、こういう話、得意じゃないからさ」
「本城さんは、誰かに相談とかされたりするんですか?」
「私?」
「えぇ」
「……私も、あんまりしないかな。」

 焼き鳥を「うまっ!」と、言いながら食べてる本城さん。

「まぁ、私の場合、社内だったし。強いて、相談するなら笠原かなぁ」
「へぇ……」
「まぁ、そんなに相談したことないけどね」

 少しだけ私と似てるかも、と思った。

「実は、まぁ……ちょっと、色々、あったんです」
「うん」
「素直になっちゃえば楽なんだしょうけど。彼のこと考えると、いろいろまだ時期じゃないって思えて」

 私が楽になることよりも、遼ちゃんが楽であってほしい。優先順位は、私じゃなく、遼ちゃんなのだ。

「彼を支えたいって思うんですけどね」
「……いいんじゃない?」
「いいんですかねぇ」

 遼ちゃんにとって、『籍を入れる』ことが、支えになったのかもしれないけど、私にとっては、それが、彼の足枷になってしまうのではないか、と怖くなる。
 結局のところ、私に自信がないことが、一番の原因なのか。

「本城さんは、どうなんですか?」
「私?」
「はい」
「別れたよ」
「……へ?」

 あっさり言う本城さんに、思わず、気の抜けた声しか出なかった。

「あ、知らなかった?」

 知らなかった。というか、いつの間に? 全然、そんなそぶりも見せなかった本城さん。

「去年の年末の時には、冷却期間って言ってましたよね?」
「ん~、でも、決算の前には別れてたかな」

 ……仕事、好きですよね。本城さん。

「仕事楽しいしね。今は、恋愛より仕事かなぁ。」
「でも、本城さんだったら、すぐにいい人現れそうですけど」
「フフフ。会社と自宅の往復だけどね」
「なになに? 恋バナ?」

 頼んでいた厚焼き玉子を持って、女将さんがやってきた。

「女子会って言ったら恋バナよね~♪」

 するっと本城さんの隣の席に座って、キラキラした目で私を見つめる女将さん。

「いや~」

 二人がかりで聞かれるのか? と思うと、若干、引き気味。

「なかなか素直になれない神崎さん、のようですよ。」

 ニヤニヤしながら厚焼き玉子を半分にして、大きな口に頬張る本城さん。

「うわ。やっぱり、美味しいですね。ここの厚焼き玉子」
「あら、ありがとう~」
「正直、これだけあれば、他はいらないかも~」
「だめよ、板さんが寂しい思いするから」

 フフフっと笑いながら、カウンターの中に戻っていく。

「でも、美味しいよね?」

 いつもよりも可愛らしい本城さんに、つい笑ってしまう。

「ん、少しは元気が出てきたかな」
「少しですけどね」
「そこが大事。元気になるきっかけね」

 それからは、結局、仕事の話で盛り上がってしまうあたり、私たちは似た者同士なのかもしれない。
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