婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
もしなにか手紙をかけない事情があるのだとしたら……。

考えに沈みそうになり、アレクシアは小さく首を振った。

最近はふとしたきっかけでルイのことを思い出して、物思いにふけってしまう。

(今は素材集めに集中しないといけないのに)

護衛がいるとは言え、危険な森からは一秒でも早く出た方がいいのだから。

「それらしい花がある。見てくれ」

片足をついて地面を見ていたメイナードが、顔を上げて言う。

彼の示す茂みの先には、白い花が密集して咲いていた。

「間違いありません! さすが旦那様、こんな簡単に見つけるなんて」

アレクシアが笑顔で言うと、メイナードはふいっと顔を逸らしてしまった。

「俺が摘んで大丈夫か?」

「はい、お願いします」

アレクシアは微笑んで頷いた。

(旦那様、照れているみたい)

領主としても騎士としても完璧な彼だが、なぜか褒められるのに慣れていないようだった。

いつもアレクシアが感心して褒めると、逃げるように目を逸らすのだ。

(かつては英雄とまで言われた人だというのに……)

自分は褒められる存在ではないと思い込んでいる。それは間違いなく体の問題だ。

アレクシアが重い気持ちになっている間にも、メイナードは大きな手でせっせと小さな花を積み、アレクシアに差し出した。

「ありがとうございます」

受け取ったアレクシアは、先ほどと同じようにすべてに光魔法をかけ、鞄にしまった。
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