婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
メイナードのおかげで収穫はあっさり終わった。

「後は泉の水を汲まないと」

持参した瓶を取り出し、水辺に近づく。

離れていると光を反射して金色に輝く水面は、間近で見ると青みがある。

「綺麗……底まで見えるのね」

岸の近くはそれほど深くないようだ。

水底のさらさらとした砂と小石に手が届きそうだった。

瓶をそっと水面に近づけて鎮める。想像以上にひんやりとした水が少し火照った体を冷ましてくれた。

「これくらいでいいかな」

大分重くなった瓶を両手で持ち上げて、持参した布で周りを拭く。もちろん光魔法をかけるのも忘れない。

「必要なものは揃ったな?」

側で見守ってくれていたメイナードに問われ、アレクシアは頷いた。

「ではそろそろ引き上げよう」

メイナードはさっと右手を上げて、周囲の警戒をしている部下に合図を送る。

清涼で美しい泉のほとりは、間の森の中とは思えないほどに平和に感じるけれど、メイナードはかなり警戒している様子だった。

「こちらに来てくれ」

メイナードと護衛騎士に回りを囲まれ、来た道を引き返す。

ところがそのとき、聞いたことのないような甲高い獣の鳴き声が辺りに響いた。

「な、なに?」

アレクシアはびくりと体を震わせて、キョロキョロと辺りを窺う。

メイナードはそんなアレクシアの腕を掴むと、冷静な声音で「大丈夫だ」と言った。

けれど、彼の表情は険しく、簡単な状況ではないのが見て取れる。
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