婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
不意に肩を掴まれた。目の前ではメイナードが心配そうにアレクシアの顔を覗き込んでいる。

「は、はい……なんとか」

「怪我は?」

「ないです。今のは?」

なんだったのか聞こうとしてメイナードの方を向いたアレクシアは顔を強張らせた。

「旦那様、お怪我を!」

彼の左腕が血に染まっていた。

「も、もしかして私を庇って?」

咄嗟に目を瞑ってしまったからなにが起きたのか分からないが、そうでもなければアレクシアが無傷なわけがないと思う。

「ごめんなさい! ああ、どうしよう……」

「大丈夫だ、慌てなくていい」

相当な痛みがあるはずなのに、メイナードは顔色ひとつ変えない。アレクシアの方が真っ青になっている。

「公爵閣下!」

部下の騎士もメイナードの状態に動揺していた。

「問題ない。それより倒した魔獣に変わったところはないか、見張っておいてくれ」

「はい」

命令を受けて、騎士たちはかなり遠くに横たわる魔獣の下に向かう。

「あれは…」

「俺が飛ばした。うまく手加減できなかったから死んでいるかもしれない」

そう言いながら、メイナードは傷の止血を始めようとする。

「あ、旦那様、私が」

茫然としてしまい動けなかったが、ここで治癒魔法を使わなくていつ使うと言うのだ。

かなり深い傷のようだから、強い魔力を込めなくては。

手のひらに力を集中する。すぐに白金のまばゆい輝きが辺りを照らした。
< 107 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop