婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
メイナードが驚いたように目を見開く中、アレクシアは彼の傷に癒しの力を注ぎこんだ。

これで完全とまでは言わないが、少しは癒えるはず。

しかし光の中、メイナードが苦し気に顔をしかめた。

「っ!」

「え?」

アレクシアは驚き、翳していた手を引っ込める。

するとメイナードの表情も穏やかになった。

「そんな……治癒魔法が効かない?」

いや、効き目がないというよりも逆に害になっていたようにすら見えた。

(どうして?)

茫然とするアレクシアの前で、メイナードは先ほどやっていたように自らを止血をする。その様子をただ眺めていた。

治癒魔法の使い手のはずが、夫の危機になにもできずに突っ立っているだけだなんて。

幾重ものショックで、頭がうまく回らない。

そんなアレクシアを、止血を終えたメイナードが優しく促し砦に向かった。


負傷したメイナードの姿を見た砦の責任者である隊長は、たいそう驚きながらも、傷薬や包帯を素早く用意した。

自分でやると言うメイナードをなんとか説き伏せて、アレクシアが手当をすることになった。

皆には部屋から出てもらいふたりきりになると、メイナードが上着を脱いだ。

逞しい上半身が露わになり一瞬どきりとする。しかしすぐに腕についた血を見て、それどころではなくなった。

まずは傷を清潔な水で洗い流さなくては。

「しみるけど我慢してくださいね」

「ああ」
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