婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
安心して残りの傷薬を塗り、包帯を巻き手当を終えた。

「痛くないですか?」

メイナードが上着を羽織るのを見ながら聞いてみる。

「大丈夫だ」

アレクシアは居住まいを正した。

「旦那様、先ほどは守ってくださりありがとうございました。私が足でまといなせいで怪我までさせてしまって本当に申し訳ありません」

頭を下げようとするのをメイナードが制した。

「気にしなくていい。妻を守るのは当然だ」

「妻……そ、そうですね」

こんなときなのに彼のひと言で鼓動が乱れてしまった。

自分がメイナードにとって守るべき相手であるという事実が、落ち着かない気持ちにさせる。

(旦那様は真面目だから、義務としておっしゃっているのでしょうけど)

「あなたは怪我をしていないか? 先ほど突き飛ばしてしまったが」

「大丈夫です。旦那様のおかげで、傷ひとつないですよ」

微笑みながら答えると、メイナードがさり気なく視線を逸らした。

ふたりきりの今、彼は仮面を外しているため、表情がよく分かる。

アレクシアは手当に使った薬などを片付けてから、メイナードが座るソファーの隣に腰を下ろした。

「治癒魔法が利かなかったのは初めてなのですか?」

あのとき、彼も驚いていたように見えた。

メイナードは頷いた。

「と言っても、最後に治癒魔法を受けたのは十年以上前なんだ」

「十年? ……もしかして隣国との戦のときですか?」
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