婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「誰に口を利いている? なぜ俺がお前に指図をされないといけないのだ?」

普段、アレクシアには決して見せない、冷酷な言動と威圧。

さすがにセラも緊張感を滲ませたが、それでも彼女は引き下がらなかった。

「私は王太子殿下の名代としてここにいます。たとえ公爵閣下のご命令でも頷けません」

「王太子の命令だとしても、言われたまま妻を差し出すつもりはない」

王太子と争うことも厭わないメイナードの決意を感じ取ったのか、セラが動揺を見せる。

「ですが、どうしても公爵夫人に来てもらわなくてはならないのです!」

「ならばその理由を述べよ。行くか行かないかは俺が判断する」

「そんな……」

セラは葛藤しているようだった。恐らくメイナードの反応が予想と違っていたのだろう。

部屋に沈黙が訪れた。

セラは唇を噛みしめて、俯いている。

(これ以上は無駄だな)

メイナードは椅子を鳴らして立ち上がった。

「言いたくないならそれでいい。だがアレクシアの王都行きは諦めろ」

そう言い残し部屋を立ち去ろうとした。そのとき、

「お待ちください! 話します」

セラが追いすがってきた。

メイナードはそのひどく慌てた様子を一瞥してから、再び椅子に座る。

「……実は王太子殿下の体調が思わしくないのです」

メイナードはわずかに目を瞠った。しかし仮面があるのでその変化をセラは気づかないまま、話を続ける。
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