婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
中の一際豪華な椅子には、黒い仮面の男が座っていた。ただ豪奢な黄金の髪からイライアスなのだとひと目でわかる。

彼と対になるように置かれた椅子にはにオーレリアが着席しており、少し離れた場所にアレクシアの父と継母の姿が有った。

アレクシアとメイナードは、イライアスから少し距離を置いた位置で立ち止まり、頭を下げた。

礼儀として、この中で一番身分の高いイライアスから声がかかるのを待っているのだ。

しかし、なぜかなかなか言葉がかからない。

(どうして黙っているのかしら)

不審感を覚え始めたとき、なにかがばきりと割れる大きな音が聞こえて来て、アレクシアは驚きつい顔を上げてしまった。

そして目の前の光景に目を見開く。

「お、王太子殿下……」

イライアスが椅子から立ち上がっていた。仮面は外れていて顔一面をどす黒い刻印に覆われた顔の様子がはっきりと見えた。

(想像していた以上に酷いわ)

衝撃を受けながら視線を落とすと足元には、先ほどまで彼の顔を隠していた黒い仮面がふたつに割れて転がっている。

先ほどの音はこの仮面を破壊した音なのだろう。

イライアスは明らかに激高した様子で、アレクシアたちを睨んでいた。

「お前たちの仕業なんだな!」

突然の言いがかりに、アレクシアは困惑した。

(王太子殿下はなにを言っているの?)
< 178 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop