婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
アレクシアの治癒の力が欲しくて呼び出したのではないのだろうか。現に状況が非常に悪いのは一目瞭然。

それならば、むしろ丁重に出迎えるところなのに、いきなり罵倒されるとはいったいとういうことなのだろう。

分からないことだらけだが、イライアスの顔は憤怒に染まっていてとても恐ろしい。

なにも言えないアレクシアに代わり、メイナードが口を開いた。

「王太子殿下、要請に応じ妻と共に領地からまいりましたが、これはどういうことでしょうか」

メイナードの声は冷ややかだった。

彼がイライアスの態度に不快感を持っているのが、聞かなくても分かった。

「それはこちらの台詞だ! お前のその顔、なぜ呪いが消えている? 俺の顔に突然こんなものが現れておかしいと思ったが、お前がなにかしたんだな!」

冷静なメイナードとは対照的に、イライアスは理性を失ってしまったように怒鳴り立てている。

かつては冷酷なところはありながらも、余裕と自信に溢れ他人を見下すような人だった。

しかし今はその面影は一切ない。

「たしかに妻のおかげで呪いから解放されました。それは王太子殿下もご存知のはず、なにしろ当家に間者を送り込んでいたのですから」

メイナードの言葉にアレクシアは内心驚愕していた。

王太子の手の者が城にいたとは信じられないからだ。

(いったい、誰が……)
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