婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
あの少数精鋭の使用人の中に、メイナードを裏切っている者がいると言うのだろうか。

「アレクシア!」

思考を巡らせている中、急に大声で名前を呼ばれて、アレクシアは飛び上がりそうになった。

「は、はい、王太子殿下」

「今すぐ俺の呪いを解け。これは王命だ」

いつか、アレクシアを追放したときのような、居丈高な態度だった。

「妻は解呪士ではないので、すぐに呪いを解くのは不可能です」

メイナードがアレクシアを庇うように一歩前に出た。守られているのを感じ、アレクシアはほっと息を吐く。

「嘘を吐くな! 現にお前は治っているではないか! もううんざりなんだよ! 早くしろ」

叫ぶイライアスに、もはや王太子としての品位はない。

(王太子殿下として尊敬なんて到底できない)

人助けだと思いやって来たけれど、イライアスに対しほんのわずかに残っていた善意すらも消えてしまいそうだ。

アレクシアをはじめ誰もがうんざりとしたこの最悪な場に、突然穏やかな声が響き渡った。

「イライアス様、お鎮まりください」

オーレリアだった。それまで無反応でイライアスの暴言を聞いていた彼女が、初めて口を開いたのだ。

落ち着き、余裕の笑みさえ浮かべている彼女からは、満を持して出てきた強者のような自信が溢れていた。

イライアスはオーレリアの言うことは聞き入れるようで、口を閉ざしどさりと椅子に座り込む。
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