婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました

◇◇◇

(なんて美しい人なんだ)

彼女を初めて間近で見たとき、胸を突かれたような衝撃を受けた。

絵姿よりも遥かに繊細で優美で、涼やかな声までもがメイナードを動揺させる。

ただ、鼓動が落ち着き冷静さが戻ると、彼女がとても疲れている様子であることに気がついた。

体力とは無縁の貴族令嬢が、長時間馬車に揺られてやって来たのだから無理もない。話したいこともあったが、まずは休むように伝え、儀式が始まる夜を待った。

日が落ちた頃、ルーサーがアレクシアの準備が整ったと知らせにきた。

メイナード自身もとっくに支度を終えていたので、すぐに城内の神殿に向かう。

薄暗闇の中でもアレクシアの姿はすぐに見つけられた。

どこか儚げで、メイナードの心をやけにそわそわとさせる。

彼女が自分の妻になるのだと思うと、高揚するのを抑えられない。

(俺は、彼女との結婚を喜んでいるのか?)

メイナードは自問したが、すぐに考える必要などないのだと気がついた。

今、気持ちが浮き立ち、らしくもなく鼓動が乱れているのは、アレクシアに惹かれているからだ。

司祭の前に並んで立つ。アレクシアの頭はメイナードの肩より下にあり、彼女の華奢さを痛感させた。

(優しく触れないと壊れてしまいそうだ)

誓いの口づけのときがきて、メイナードは細心の注意を払ってアレクシアの繊細なヴェールを持ち上げた。

そしてよりはっきり見えるようになった彼女の顔色を見て、驚愕した。

血の気がなく明らかに普通ではなかったのだ。

(どうしたんだ? どこか具合が悪いのか?)
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