婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
心配でじっと見つめると、アレクシアはますます青ざめる。

その瞬間、はっとした。

(彼女は俺を恐れているんだ)

誓いのキスのために、人前では常に着けている仮面を外していたのだ。

アレクシアには、メイナードの顔に刻まれた、古代文字のような柄の全容が見えているはずだ。

怖がり怯えるのは当たり前。悲鳴を上げないだけましだ。アレクシアはおそらく意思の力で感情を抑えているのだろう。

そう察した途端に高揚していた気持ちは消え去り、代わりにずくりと胸が軋んだ。

ルーサーに感化されたつもりはないが、心の底ではアレクシアがメイナードの中身だけを見て受け入れてくれるかもしれないと、無駄な希望を持ってしまっていたのだ。

(現実に、そんな都合のいい話があるわけがないというのに)

メイナードは落胆しながらも、できるだけ早く、アレクシアにとっては苦痛でしかないであろう式が終わるように、素早く誓いのキスをするふりをした。

司祭はふりで済ませたことに気付いただろうが、メイナードの事情を知る者のため見て見ぬふりをした。

その後はすぐに仮面を付けて顔を隠す。

儀式は無事に終わり、あとは礼拝堂を出るだけだ。

そのとき式に出席していたルーサーがそっと近づき、耳元で囁いた。

「メイナード様、砦から上級クラスの魔獣が現れたとの報告が。騎士団長の派遣許可をお願いします」
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