婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
金の泉はその名の通り、水面が金色に光る泉のことだ。

砦と森の最奥のだいたい中間地点にあり、その辺りまでは兵士ならば気軽に行き来できるという目安となっている。

しかし安全だという概念は崩れたと考えた方がいいかもしれない。

魔獣の活動区域が広がっている。万が一砦の防衛線を超えて町にまで至ったら、領民に甚大な被害が出る。

それに……メイナードの脳裏に、白いドレスを纏ったアレクシアの姿が思い浮かんだ。

美しい青い瞳は、怯えたように揺れていた。

いずれ彼女に瑕疵がないと証明した上で離縁をして、どこか好きなところに行かせてようと考えている。

手放すときのことを想像すると苦しさを感じるが、そうするのが一番いいのだ。

そのときまでは、アレクシアには余計な心配をかけず安全に過ごさせてやりたい。
決して魔獣の恐怖など味合わせたりはしない。

メイナードは隊長と彼の部下の数人を引き連れて、泉に向かった。

グリュプスが現れるまで辛抱強く待つつもりでいたが、相手は予想外にメイナードたちを待ち伏せするかのように泉のほとりに悠然と座っていた。

「構えろ!」

隊長の号令で、騎士たちが剣を構える。

メイナードもゆっくりと剣を鞘から抜き放った。

人間の強さが分るのだろうか。グリュプスはメイナードだけをじっと見据えている。
< 59 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop