婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
まるでほかの者は眼中にないとでも言うように、決して目を離さない。

「……俺がやる。手を出すな」

反論したそうな隊長を目で制して、メイナードは前に進んだ。

敵との距離が徐々に近づく。威嚇するような唸り声が響き、その直後、グリュプスが大きな羽を広げて舞い上がった。

背後で騎士の怒号が響くが、メイナードは慌てることなく、すっと右腕を前に出した。

「消え去れ」

低く告げた途端に、右手の手のひらに魔力が集まる。

まるでメイナードの体に走る紋様のような漆黒の光が力の高まりと共に輝きを増し、やがて宙に浮かぶグリュプスへ怒涛の勢いで襲いかかった。

黒光が宙で爆発した直後、甲高く耳障りな悲鳴が響き、魔獣が跡形もなく砕け散った衝撃波が地上を襲う。

しばらくすると、辺りは静寂を取り戻し、メイナードの魔力も消えてなくなった。

隊長も騎士たちも我に返ったようで、メイナードの下に駆け寄ってきた。

「閣下! ご無事ですか?」

「ああ、問題ない」

頷き、剣を腰に掲げた鞘に戻す。

「……閣下の魔力を久々に見ましたが、さすがです。あのグリュプスを跡形もなく葬るとは。最強と名高い騎士団長ですら、一撃で倒すのは難しいでしょうに」

「忌々しい力だがな」

メイナードの魔法は闇の力だ。敵を焼き尽くす攻撃魔法で、最上急の魔獣とて耐えられない程の威力を持っている。
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