婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
相当慌てているようなその態度に、アレクシアは内心首をかしげる。

(どうしてこんなに動揺しているのかしら)

同時に、顔は見えなくても意外に感情が伝わってくるものだと、妙に感心していた。

「俺はあなたを疎ましいなど思っていない。俺の妻になどされて申し訳なさを感じてはいたが」

「え……それは、本当ですか?」

「ああ、俺は嘘をつかない、真実だが……どうしたんだ?」

俯いてしまったアレクシアに、メイナードが慌てて声をかける。

心配してくれているのだと、今度は素直に信じられた。

「旦那様、嬉しいです」

「嬉しい?」

メイナードはますます困ったように、落ち着きがなくなる。

アレクシアは微笑んだ。喜びで自然にそうなってしまったのだ。

「私は旦那様と仲よくしたいと思ってたんです。だから嫌われていないと知って本当に嬉しいです」

「は……いや待て。なにを言っているのだ? どうして俺なんかと」

メイナードはアレクシアの言葉が信じられないようだった。

無意識だろうが顔を隠すように右手で顔半分を覆っている。

その仕草は彼の心の傷の表れのように感じた。

しばらくするとメイナードが言った。

「礼拝堂で俺の顔を見たとき、恐怖を感じただろう?」

「礼拝堂?」

婚儀でのことを言っているのだろう。そう考えてアレクシアははっとした。
< 89 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop