婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
たしかにあの夜は、その場の雰囲気とまだ会ったばかりのメイナードに対する不安が大きくて、びくびくしていた。

そんな中、初めて彼の素顔を見て動揺してしまったのだ。

決して悪気はなかったが、メイナードはアレクシアのわずかな反応も見逃さなかったようだ。

(誤解を解かなくては)

「あの、旦那様に対して怖がっていたわけではないんです。夜の礼拝堂は初めてでしたし、風の音がすごかったので……」

「……そうなのか?」

メイナードは、呆けたように呟く。

「はい」

「俺の顔を見ただろう? 不快ではないのか?」

「正直に言えば驚きましたけれど、不快だなんて思いません。ただ心配はしています。あの……お医者様には?」

「医者では治せないんだ」

メイナードは即答した。恐らく、もう何人もの医師の診察を受けたのだろう。

(噂通りなのね)

お互い、思い考えることがあるからか、部屋には沈黙が降りる。

しばらくするとメイナードが先に口を開いた。

「怖がらせたくなかったから、できるだけ会わないようにしていた。だが避けているわけではなかった。もしあなたが迷惑でないのなら、ときどき話す時間を持とう」

メイナードの声音は、どこか素っ気なかった。しかし彼はアレクシアを受け入れてくれているのだと伝わってきた。

「はい!」

嬉しくてニコニコしながら、冷めてしまったお茶を飲む。
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