婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
部屋に入ったときの緊張感はもうない。

「旦那様は、普段お食事はどうされているのですか?」

「部屋で取っている」

メイナードは先ほどよりリラックスしているようだが、それでもしっかり背筋を伸ばしている。

「そうなのですか。私はダイニングでいただいています。あの、もしよければ、ときどきは一緒に食事をしませんか?」

嫌われていないのだと分かったばかりで厚かましいかとも思ったが、次に話せるのがいつになるか分からないため、思い切って提案してみた。

食事をしながらお互い近況報告をしたらいいのではないかと思ったのだ。

しかし、メイナードの反応は鈍かった。

「それは難しい」

「……そうですか。申し訳ありません、厚かましいお願いを」

しょぼんと沈むアレクシアに、メイナードが慌てて言い募る。

「謝らないでくれ。怒っているわけじゃない。ただ食事のときは仮面を外す。きっと気分の悪い思いをさせてしまうだろうから、断ったんだ」

「え、それだけですか?」

「大事なことだ」

「いいえ、たいしたことじゃないと思います。気になるようでしたら食事中は人払いをすればいいのですし」

メイナードは俯いた。

「本当に……俺が怖くないのか?」
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