婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「はい。旦那様には感謝しています。王太子殿下に押し付けられた私を受け入れ、なに不自由ない暮らしをさせてくださって……本当にありがとうございます」

それはアレクシアの本心だった。

考えてみれば、かなり好きにさせてもらっている。

「……分かった。では五日に一度、夕食を共にしよう」

「はい」

提案を受け入れてもらえたことが嬉しくて、アレクシアは顔を輝かせた。

「ありがとうございます、旦那様」

「ああ……」

メイナードは戸惑った様子ながらも、頷いた。

それから、メイナードとアレクシアは定期的に食事をするようになった。

はじめは仮面を外すのを躊躇っていたメイナードも、素顔を晒しても平然としているアレクシアと接しているうちに慣れてきたのか、ふたりでいる間は、仮面をずっと外すようになっていた。

そうすると彼の表情は意外によく変わるのだと気がついた。

アレクシアに対しては、戸惑っていたり、照れている場合が多い。

多分、近い距離感に慣れないのだろうが、そんな自然な姿を見せてくれると、ふたりの距離が近づく気がする。

メイナードの顔には、古代文字のような漆黒の文様が刻まれているが、顔の作り自体は極上だった。

完璧なアーモンド形の瞳は黄金で、その目にじっと見つめられるとアレクシアは頬が熱くなるのを感じた。
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